ライブ評


ここでは最近のライブで聴きごたえのあったものをアトランダムにとりあげていきます。

●ラリー・カールトン・アンド・ザ・サファイア・ブルース・バンド2(05/2/22・東京・ブルーノート東京)

原点回帰、極上のブルース・ギター

約3年ぶりにラリー・カールトンを聴きに行って来た。場所はおなじみのブルーノートだ。

今回は一昨年に引き続き、ブルースを中心としたナンバーを演る「ザ・サファイア・ブルース・バンド」を引き連れての来日である。

このバンド名はもちろん、彼が2003年に出したブルース中心のアルバム、「サファイア・ブルー」にちなんでいる。

バンドのメンツは、アルバムのレコーディング・メンバーと共通している人もいるが、大半は新規に参加した人たちである。

具体的には、アルバム参加組はマーク・ドウジット(テナーサックス)だけ。ダグラス・モフェット(バリトンサックス)、マイク・ヘインズ(トランペット)、ロバート・バリー・グリーン(トロンボーン)、グレッグ・マティソン(キーボード)、トラビス・カールトン(ベース)、モイーズ・ルーカス(ドラムス)はいずれも新規参加組である。

アルバムの演奏とはまた、ひと味違ったライブが期待出来そうだ。

定刻の午後7時を少し回ったところで、ラリー以外のメンバーがステージに登場。さっそく、「フライデイ・ナイト・シャッフル」をスタート。

アルバム「サファイア・ブルー」のトップ、快調なテンポで飛ばすシャッフル・ナンバー。いかにも、オープニングにはうってつけの選曲だ。

ひとしきり彼らの演奏(ソロはマーク)が続いたところで、今夜の主役、ラリー・カールトンがいつものようにカジュアルなシャツ姿で登場、観客席に大きな歓声が湧き起こる。

まずはバックが演奏、十分お膳立てが出来たところで主役が登場。こういった演出方法は、BB、アルバート・キングなどの大御所ブルースマンのステージングを強く意識しているのは間違いない。

トレードマークのサンバーストES335をセッティング、ピックを一振り。さっそくホットなプレイが始まる。

かなりエッジの立った音で、派手なスクゥイーズをキメるラリー。まさしく、ブルースギターそのもの。

威勢のいいシャッフルで、お客のつかみは十分。曲は、一転してスローナンバーへ。これまた「サファイア・ブルー」からの「ナイト・スウェッツ」だ。

かなり抑え目のトーンで、ブルーズィ、そしてメロウな調べを紡いで行くラリー。観客もかたずを呑んで、そのプレイを見守る。

アルバムからの2曲目が終わり、場内もすっかりブルースな雰囲気に染まった頃、聴き覚えのあるイントロを弾き出すラリー。

ん? これはもしかしてスティーリー・ダンのあの曲?

そう、次の曲はアルバム「彩(エイジャ)」でも名曲とされる「ジョージー」でありました。

これには、観客も大喜びで、ブルースとはまた違ったアーバンなノリを堪能。

4曲目は、小ぶりなマーティンのアコギに持ち替えての「ミニット・バイ・ミニット」。同題のアルバムもヒット、ラリーにとっていまや代表曲といえる、ドゥービー・ブラザーズのカバーナンバー。そういえば、3年前のステージもやっていたのを思い出した。

エレキとはまた違い、非常に軽快なタッチでアコギを弾くさま、これまたキマっている。

次の一曲も、アコギで。自作の「スマイルズ・アンド・スマイルズ・トゥ・ゴー」である。軽やかなビートに乗せて、指板の上を縦横無尽に動き回るラリーの指遣いに、観客全員が引き寄せらていく。

ES335に持ち直し、ブルースな世界が再び始まる。6曲目はこれもまた「サファイア・ブルー」に収録されたスローナンバー、「ジャスト・アン・エクスキューズ」。

ゴスペルライクなサウンドに乗せて、クリアなトーンでタメを効かせたギターを弾きまくるラリー。「間」の取り方のなんとも絶妙なこと。

次第に音量をアップして、最後は熱く熱〜く盛り上げていく。うーん、これぞブルース。

ラリーが「次の曲はマークと、グレッグをフィーチャーします」とアナウンスして始めたのは「7フォー・ユー」。裏打ちなサウンドがちょっとモダンな感じ。

マークのジャズ、ブルース、ファンクなんでもござれな達者なテナー、そしてグレッグのも力強いエレピ&ハモンド。彼らの実力のほどが、そのソロ・プレイにはっきりと現れていた。

特にグレッグの音はかなり泥臭くて、洗練という言葉からほど遠いのだが、その力技中心のダイナミックな演奏は、いかにもブルース・バンドにふさわしい感じだ。

再びラリーが「(ベースの)トラビスをフィーチャーします」と言って始めたのは「ディープ・イントゥ・イット」。そう、2001年発表のアルバムのタイトル・チューンだ。

サウンドは、ちょっとセカンドラインふう。躍動感あふれるビートを生み出すトラビスのソロを聴いて、普段は目立たないところでしっかりといい仕事をしてるなと感心。

ドラムスのモイーズのソロをフィーチャーして演奏されたのは、「スライトリー・ダーティ」。これも「サファイア・ブルー」に収められている曲だ。アルバムではテリー・マクミランのハープがフィーチャーされていたが、これがまるごと抜けることで、かなり印象が変わっている。

モイーズもまた、他の曲では堅実なプレイに徹していたが、この曲のソロでは大暴れ。スティックさばき、その一打一打ごとに、彼の底知れぬパワーを垣間見せてくれた。

ここまでホーン・セクションについてはほとんど触れることなく来てしまったが、ラリーが選んだメンツだけに、もちろんその実力は相当なもの。4人のリーダー格、マークはいうまでもないが、ほとんどソロを取ることのない他の3人も確かなバッキングを聴かせてくれた。

そんな彼らをフィーチャーして最後に演奏してくれたのは「テナー・マッドネス」。いまさら説明不要だろうが、ソニー・ロリンズ作の、モダン・ジャズにおけるスタンダード的ナンバー。

これをステージの一番上手のロバートから、マイク、ダグラス、そしてマークと、順にソロを回していく。

ゴリゴリ吹きまくる人、飄々と吹く人、スタイルはそれぞれなれど、いずれも見事なソロをキメてくれた。縁の下の力持ちの彼らにも、スポットが当たった一曲であった。ここでいったん退場。

アンコールは、さて何だろう。前回のように、「ルーム335」だったら最高なんだが、とか、いやもしかしたら「スリープウォーク」かなとか、興味津々。

で、再びステージに戻ったラリーが弾き出したのは、「ア・ペア・オブ・キングス」でした。

これもまた「サファイア・ブルー」からのナンバー。アップテンポ、ファンキー・ブルースのスタイルの、歯切れのいいナンバー。

歌のタイトルはトランプの「キング」のカード2枚と、BB、アルバートふたりの「キング」を引っかけてあるのだろうな。

ラリーのギター・プレイのほうも、アルバートの派手なチョーキング・スタイルを相当意識したもの。ブルースの先達に対するリスペクトがはっきりと表われている。

「ルーム335」も、もちろん聴きたかったが、この曲も悪くない。何より、ブルースをメインに据えたこのバンドのステージを締めくくる一曲として、一番ふさわしいように思った。

プロ活動を始めて、35年あまり。その間、ずっと先頭を走り続けて来たギタリスト、ラリー・カールトン。

そんな彼にとっての原点、ルーツはやはり、黒人たちが長い歳月にわたって脈々と生み出してきたブルースなのだろう。

最もブルースの本質を知る白人のひとり、ラリーの奏でるギターは、決して借り物でも亜流でなく、しっかりと自らの血となり肉となったブルースだった。

ブルースがもはや人種に左右されることのない、ユニバーサルな音楽でありうること、彼のステージを観て、それを筆者も確信した。

21世紀、ブルースはありとあらゆる肌色の人たちによって、しっかりと継承されていくに違いない。

 

●ジャパン・ブルース・カーニバル2003(03/5/25・東京・日比谷野外音楽堂)

なんでもあり、それがブルカニ

今年もブルカニに行ってきた。他サイトでも既にいろいろとレヴューがアップされているようなので、詳細はそちらを見ていただくことにして、筆者なりの印象を綴ってみたい。

定時の4時に遅れること約10分。司会のゴトウゆうぞうさんの登場でステージが始まる。

皆さんご存じのように、今回は主役のアイク・ターナーが過去の麻薬使用歴を理由に、当局から入国を拒否され、即帰国してしまうという「トンデモ」なアクシデントがあった。

ゆうぞうさんのMCは、そのへんもさらりと笑いのネタにしつつも、やはり前代未聞の危機的状況であることはよく把握していらっしゃるのが、ひしひしと感じられるものであった。

「ここでお客さんを失望させるようなステージにしたら、もう来年はないかもしれない」というような。

で、急遽決まったのが、オープニング・アクトとしての「ゴトウゆうぞう&マイ・オールド・ブルー・フレイム」の出演だ。

メンバーはおなじみ、ゆうぞうさんの相方、カメリア・マキちゃん(g)、よくは知らない(メンゴ)カワモトシンイチさん(kb)、そしてバーべQ和佐田(b)、ニューファンキー末吉(ds)の元爆風スランプ組。

この俄かごしらえ、前日リハをしただけの5人で演奏したのは「エヴリデイ・アイ・ハヴ・ザ・ブルース〜負けると知りつつバクチをしたよ」、「ROUTE66」、年に一度のお楽しみ(?)である「主催者からのお知らせブルース」、そして「ホワッツ・ゴーイン・オン」。

ゆうぞうさんの、関西弁のユーモアがたくみに溶かし込まれた歌詞もよかったし、マキちゃんの気合いの入ったソリッドなギター、そしてリズム隊の安定感も◎。臨時編成とはいえ、十二分に楽しめた。「ホワッツ・ゴーイン・オン」ならぬ「どないなっとんねん」には笑いました。

観客の反応も上々。ここで、「つかみはOK」という感じだったんだが……。

次に日本のシンガー/ギタリスト、ハリーが登場。去年に続いて、二度目の出演だ。

彼はいうまでもなく、ロック・バンド「ストリート・スライダーズ」のリーダーだったひと。

ステージはストーンズ・ナンバー「ユー・ガッタ・ムーヴ」から始まったのだが、この曲が終わったらすぐに一部の観客からヤジが飛ぶようになる。「つまんねーよ」「ブルースやれよ」みたいな。

もちろんハリー氏はクールなのがウリですから、そんなヤジなどまったく無視して演奏し続けるのだが、曲の間には毎度そういうヤジが入るので、こちらとしては耳障りでしょうがない。

曲は前回より少し多め。ニュー・アルバム「BOTTOLE UP AND GO」からのナンバーが中心だ。「Ready To Go」「Ramblin' Shoes」、「No Ecstasy」、「Easy Come, Easy Go」、「Give Me Your Love」というような曲順だったと思う。(タイトルが間違ってたらメンゴ。)

いずれもストーンズ、それもキースのスタイルの曲がほとんどだったんだが、それが一部観客の不満にさらに火をつけた。

「ブルースじゃねえだろ!」という。

爆音系ロックだって全然オッケーという筆者は、彼の大音量ギターもまるで気にならなかったが、中にはまったく受け付けないコア系ブルース・ファンもけっこういたようだ。

そのうち前の方で踊っているハリーの女性ファンと、ヤジっていた男性が殴り合いのケンカをはじめる始末。

もちろん、すぐに周囲から制止されたが、その光景を目の当たりにして、なんだか暗い気分になった。

そんなにイヤなら席を立って、休憩でもしてりゃいいのに。そう、思った。

ハリー氏にしてみれば、連続2回のブルカニ出場も、別に「志願」してやったことじゃないし、お仕事、ノルマなんだから文句言われてもねえ、って感じだろう。悪いのは彼じゃなく、よんだ主催者のサイドだろう。

彼のことを悪くいうなんて、まったく、了見の狭いヤツらだよな。

さて、ステージはルーファス・トーマスの「Walkin' The Dog」にて終了。ここにきて、ようやくブルースらしい曲が登場したという感じだが、ハリーの歌いぶりはあくまでも自分流。「JUST, JUST, JUST」の繰り返しとかは無しだったので、コアなファンにはいまいちのウケだったかも知れない。

とにかく、あまりにハリーが会場の雰囲気から"浮いて"いるので、観ていて気の毒になるステージだった。

こんな「非友好的」な観客の中で演奏するのは、さぞかし居心地がわるかろう、そう思った。

主催者も、無責任に出演者を決めず、次回はもう少し人選を考えたほうがいい。

さて、三番手はルイジアナで活躍するギタリスト、サニー・ランドレスがブラック・サンバーストのレスポールを抱えて、ひとり登場。

実は15年ほど前、他のアーティストのバックで来日したこともあるそうなのだが、彼自身にスポットが当たっての来日は初めて。

パッと見は若そうなのだが、実はもう50過ぎだという。

いろいろと自己紹介などのMCを交えつつ、彼ひとりで演奏するのは「ザディコ・シャッフル」「サウス・オブ・I-10」などのルイジアナ〜ニュー・オーリンズ系のメジャー調の曲、「ブロークン・ハーテッド・ロード」「ヘル・アット・ホーム」などのブルース系の曲。(詳しいセットリストは、すかさんの「TODAY'S CD」のぺージに載っていますので、そちらもご覧あれ。)

サニーの弾くスライド・ギターは他のどのギタリストとも違って、ユニークそのもの。エコーを多用し、キラキラ感、浮揚感のあるサウンド。親指によるベース・ランニングが実に巧みで、もうどうやって弾いてるんだろうという驚きの連続。

好みの音かというと、必ずしもそうではないんだけど、とにかく「上手い」ということは認めざるをえない腕前です。ハイ。

でも、なにより素晴らしいと思ったのは、曲間のMCから感じられる、彼の人間性。ほんとに、性格のいいひとなんだろうな、と感じた。

掛け値なしのトップ・プレイヤーなのに、「オレのテクニック、スゴいだろ」みたいなひけらかしが全くなくて、好感が持てた。

ステージで一番ウケたのはやはりクラシックなブルース、「キー・トゥ・ザ・ハイウェイ」。そう、筆者も日頃演奏している曲だ。これは嬉しかったな。

ステージはその次の「バック・トゥ・バイユー・テック」でおしまい。観客にはおおむね好印象を残して、退場して行った。

さて、大トリはもちろん、ザ・キングズ・オブ・リズム。あるじのアイク・ターナー抜きでの登場である。ドラマーをのぞく全員、お揃いのスーツでビシッと決めている。

前日のクラブチッタ川崎では、ラストはサニー・ランドレスだったという。前日のキングズのウケが非常によかったので、順番を入れ換えたのだろうね。

まずはインスト・ナンバーが続く。1曲目はミディアム・テンポ、2曲目はアップ・テンポのブルース。

3曲目でようやく知っている曲が登場。ジュリアン・キャノンボール・アダレイのヒット、「マーシー・マーシー・マーシー」だ。これが実にごキゲンなノリ。ホーン・プレイヤーたちも入れ替わりでソロを披露するが、みなものスゴくうまい。

アイクなしでも十分「イケてる」ことが、証明できた感じだ。

もちろんこれは、この「緊急事態」に、いつもより緊張感を持って、気合いを入れて演奏しているということにもよるのだろう。

4曲目は早めのテンポの「カレドニア」。ここでのシャッフル・ビート、絶品でした。バンドの実力のほどはシャッフルをやらせると一発でわかるとよく言われますが、その通りだと思いましたわ。

5曲目はスロー・ブルース。ギタリストのソロをフィーチャー。この彼がわりと若めの白人なんですが、レイ・ヴォーンかバディ・ガイかという感じの大音量系。耳にキーンと来る。ひとによっては「ちょっと勘弁」というクチもいたかも。

6曲目は「アイクス・テーマ」というインスト・ナンバー。曲調はフレディ・キングの「スタンブル」に近い。

当然ながら、アイクに代わって、白人ギタリストが弾きまくる。もちろん、派手なトレモロ・プレイもやってくれた。

7曲目はスロー・ブルース。すかさんのレヴューを拝見するに「アフター・アワーズ」という曲のようだ。

ステージ向かって左端のピアニスト氏(sumoriさんによると、アイクの幼なじみだとか)のリード・ヴォーカル。うまいって歌ではないが、年輪を感じさせてなかなかナイスだ。

彼らのステージは、緩急とりまぜ、実にうまい曲順になっていて、次はなんと「ジョニー・B・グッド」。

ギタリスト氏がヴォーカルはとるわ、ギターは弾きまくるわの大活躍。

しまいには、アイクの向こうを張って、背中弾きまで披露。サービス精神、旺盛やな〜。

9曲目はタイトル不明の、ミディアム・テンポのブルース。

10曲目はスライ&ファミリー・ストーンの「アイ・ウォント・トゥ・テイク・ユー・ハイヤー」。アイク&ティナ時代のナンバーということですな。

この曲もサイコーの盛り上がりを見せる。ほとんどの観客が踊っている状態。

ラストは「ブルース・イズ・オールライト」。客席とのコール&レスポンスでは、「ブルースは最高だ」という日本語の歌詞に変えて、大ウケ。

バック・バンドだけでも、観客を十分に楽しませるだけの底力がありました。

いったん退場し、その後、ゴトウゆうぞうさんの呼びかけにより、すべての演奏者がふたたびステージに登場して、セッション開始。演奏したのは2曲。「ウォーキン・ブルース」と「コンゴ・スクエア」。

いずれもサニー・ランドレスのしっかりとした采配により、(やや音を詰め込みすぎの嫌いはありましたが)ど迫力の演奏を延々と展開。

1曲目はギター中心、2曲目はホーン中心で、ソロもたっぷりと堪能。

フタをあける前は「風前のともしび」状態だった今回のブルカニでしたが、最後は「結果オーライ」となりました。

それもやはり、出演者たちの本気(マジ)な演奏ぶりに、観客も思わず感動した、ということでしょうね。

まさに、「ブルース・イズ・オールライト」ならぬ「ブルカニ・イズ・オールライト」でありました(笑)。

 

●ジャパン・ブルース・カーニバル2002(02/5/26・東京・日比谷野外音楽堂)

嵐を呼ぶブルカニ(Part 1)

トップバッターは「コテツ&ヤンシー」のふたり。

ハープ&VOのコテツ、キーボード&VOのヤンシーのデュオ。昨年デビューの若手にもかかわらず、すでにブルカニには二回目の出演。

関係者からの評価の高さがうかがえます。アルバムも、早くもセカンドを発売したとのこと。

彼らのステージは、評判通り、やはり楽器演奏が素晴らしいです。

コテツは素の音でこい、アンプリファイでもこいのオールラウンド・ハーピスト。

ヤンシーも、ブルースピアノにとらわれず、ラグタイムやスイングからフリーまであらゆるジャズをカバー出来る引出しの持ち主。

曲はジャズ・ジラムの古いブルース「アイ・ウォント・ユー・バイ・マイ・サイド」、バディ・ガイもやっている「トゥー・メニー・クックス」、S&Gの「明日に架ける橋」など4曲。

ふたりの確かな演奏テクニック、リズム感は会場を唸らせました。

ただ、歌のほうは、プロの歌い手としては今ひとつでした。

ふたりともまだ、声が上手くマイクに乗りきっていない感じです。

まあ、そのあたりは、今後の成長に期待したいと思います。

嵐を呼ぶブルカニ(Part 2)

二番手は、元ストリート・スライダーズのハリー(Vo,G)が出演。

今回最大の異色キャストといえそう。

一昨年秋、スライダーズを解散して以来、ひさびさの野外コンサート出演。

少数ながらもコアなファンが来ているようで、しきりに「ハリー!」という歓声が上がります。

バンドはギター、ベース、ドラムスのシンプルな3ピース。

ドラムスの巨漢は、見たことがあるひとだな〜と思ったら、元スライダーズの「ズズ」でした。

ちなみにベーシストは誰だか不明。

曲はまず、ロバート・ジョンソンの「ウォーキン・ブルース」を彼なりにアレンジしたような、ミドルテンポのブルース・ロックから。

一曲終わるごとにギターをチェンジするハリー。寡黙な彼らしく、ほとんどMCもなく、「イエー」とファンの歓声にこたえるくらいで、あとは黙々と演奏を続けます。

二曲目、三曲目は、あまりよくは知らないのですが、スライダーズ時代のナンバーのようです。

ミドルテンポのエイトビート・ロックで、いかにもスライダーズ風というか、ストーンズ風という感じの曲です。

ラストは最近の曲らしく、ロバジョンの「クロスロード」をモチーフにして、歌詞にもおり込んだナンバー。

でも全然ブルースっぽくなくて(笑)、あくまでもいつものハリーのサウンドでした。

前の組同様、曲は4曲でおしまい。ちょっと短かったな〜という印象でした。ギターソロを延々とやるようなこともなく、あっさり終わってしまいました。

せめて、3曲目をスローにしてしつこく長めにやってくれれば、もう少しお客を引きつけることが出来たような気もしました。

 

まあ、このようなコンサートに彼が出演しただけでも、驚きでした。

理屈抜きに楽しむことは出来ましたし、イベントにおけるそれなりの「アクセント」にはなっていたので、ハリー自身にはさほど悪い印象はなかったのですが、彼をよんだ主催者がわの意図はいったいなんだったのでしょう?

単なる客寄せ? それなりにブルース・アーティストとして評価しているから? よくわかりません。

「一組はロック系をよぶ」というのが主催者の方針なら、来年はぜひ下山淳さんをよんで欲しいなあ。

嵐を呼ぶブルカニ(Part 3)

三組目は「鮎川・ホトケ・ブルースバンド」が登場。

日本勢、まずは若手(コテツ&ヤンシー)、続いてロック系(ハリー)ときて、次はいよいよベテランが出陣、ということだ。

メンバーはヴォーカル&リズムギターの永井ホトケ隆、リードギター&ヴォーカルの鮎川誠、ベースの小堀正、ドラムスの岡地曙裕という、JIROKICHIでもおなじみのメンツに加えて、先ほど登場したコテツもハープで特別参加。

まずはマディ・ウォーターズの「ローリン&タンブリン」で快調なスタート。

ホトケ氏の声のコンディションは残念ながら、いまひとつというところ。

鮎川氏はテレキャスでスライドを弾きまくるのだが、根がロックなひとだけに、あまりブルースっぽく感じられない。

小堀・岡地のリズム隊は、まずまずの堅実なプレイだが、格別目立ったものはない。

そんななかで、一番目立っていたのは、コテツのハープだった。

このステージではアンプリファイド・スタイルだったが、この音が実にいい。

彼のハープが加わっただけで、音がビシッとしまって、ブルースらしくなってくる。

もし、あとの4人だけでこのステージをやっていたら、相当シマリのないサウンドになったろうな〜。

コテツさまさま、である。

続くは同じくマディの「マニッシュ・ボーイ」。

一応、「フーチー・クーチー・マン」風にコード・チェンジするタイプのアレンジ。

ようやくホトケ氏の歌もエンジンがかかってくる。鮎川氏はブラック・ビューティに持ち替えて弾きまくるが、ブルースとはいいがたいフレージング。

やはり、この曲でも光っていたのは、コテツのプレイであった。

3曲目には、鮎川夫人のシーナがゲスト参加。

あいかわらずお年を感じさせない、ティナ・ターナーか欧陽菲菲かシーナかという、はじけたミニスカ姿でところせましと動きまくる。

ビリー・ボーイ・アーノルドの「I Wish You Would」を下敷きにしたと思われる、日本語歌詞のナンバーを夫婦で熱唱。

でも、あいかわらず、ふたりとも、歌が進歩せんのう(笑)。

シーナは一曲のみで引っ込み、次はトレモローズのナンバー「シェイク・ハンズ」。

これはいかにも、ホトケ氏好みのR&Bという感じ。イベント用にしては選曲がシブ過ぎ(笑)。

ラストは、スペンサー・デイヴィス・グループの「ギミー・サム・ラヴィン」。

これはなかなかカッコいい。お客のノリもいい。

このノリをもう少し、全面で出せればよかったのだが。

 

以上5曲のステージだったのだが、音の良さで勝負する「ブルースバンド」、カッコよさで勝負する「ロックバンド」、いずれにもなりきれてなかったような気がしてならない。

あくまでもショービジネス的な意味に限った話だが、鮎川氏という特異な個性を持ったギタリストは、どうもホトケ氏のようなシンガーとあまり合わないような気がする。

ヴォーカリスト&ギタリストの双頭バンドは、ヴォーカルは強烈な個性を持った「前に出る」タイプのひとであるほうがよく、ギターはそれをうまくバックでフォローするのが望ましいのだが(ウルフとサムリンしかり、プラントとペイジしかり)、この鮎川ホトケバンドの場合、ギタリストが「視覚的に」目立ち過ぎて、本来主役たるべきヴォーカリストを食ってしまっている。

そのため、ホトケ氏が本来のカッコよさを発揮できずに終わってしまった。

ちょっと、残念である。

嵐を呼ぶブルカニ(Part 4)

さて、お次はいよいよ来日組の登場。

前日はジミー・ヴォーンが大好評を博したようだが、今日はピーター・グリーンとそのグループ。

彼は99年に続く、二回目の来日で、もちろん、ブルカニは初登場。

果たしていかがなりますか?

おなじみ、MCの後藤ゆうぞうさんのユーモラスな前説に続き、4人組で登場。

メンバーはピーター・グリーン、ナイジェル・ワトスン(ともにVo,G)、ピーター・ストラウド(B)、ラリー・トルフリー(Ds)。

ピーターはすっかり太って、総白髪。フリートウッド・マックの頃とはまったく別人のよう。

いでたちはカラフルな縦じまのシャツに、グリーンの帽子というおなじみのスタイル。

まずは、ロバート・ジョンスンの「トラヴェリング・リヴァーサイド・ブルース」から。

ナイジェルとピーターは座ってプレイ。

ナイジェルはエレアコ、ピーターはオレンジのストラトでスライドを演奏。

この曲ではナイジェルがもっぱら歌う。

続いて、同じくロバジョンの「ステディ・ローリン・マン」。

ピーターはグリーンのストラトに持ち替え、リード・ヴォーカルをとったほか、ハープも演奏。

歌はCDで聴かれるような、かなり低くてボソボソとした声だ。

いまひとつ迫力には欠けるかな〜。

ロバジョン・カバーで、もう一曲。皆さんおなじみの「スウィートホーム・シカゴ」。

この曲ではふたたび、ナイジェルがリード・ヴォーカルをとる。

正直言って、歌は彼のほうが数段うまい。声量、パンチともにある。

観客側からもおのずと合唱が起こって、ステージは次第に盛り上がりを見せてくる。

とはいえ、座ったままの演奏では、いまひとつガッツが感じられない。

こんなので、いいのか、ファンの皆さん!?

ピーター・グリーンとそのグループのステージ、まさかこんなダルダル、ユルユルのまま続くわけではないだろうな〜と思っていたら、さすがに4曲目からは座っていたふたりとも立ちあがって、ナイジェルもストラトに持ち替えた。

ここまでは、ピーターのスライド・プレイにもあまり光ったものがなかったから、これからが「本番」という感じだ。

まずは最近のレパートリー、「リーヴ・マイ・タイム」から。ピーターはヴォーカルとスライド・ギター。

続いては、昨年スプリンター・グループ名義で発表したアルバム「タイム・トレイダーズ」から「ランニング・アフター・ユー」を。この曲でもヴォーカルとスライドギターを担当。

そして同アルバムからもう一曲、「シャドウ・オン・マイ・ドア」を。

ここではナイジェルがリード・ヴォーカル、また派手なワウによるソロも聴かせてくれた。

ここまでのピーターのスライドギターは、派手さにはかけるが、ストラトから一音一音を丁寧に出しているという印象であった。

ストラトというギターの繊細さを、よく知るギタリストならではのプレイだと思った。

 

さて、ステージの終盤、ピーターはストラトをギブソンのセミホロウギター(モデル名不詳)に持ち替える。

いよいよ、華麗なスクウィーズ・プレイが聴けるのかな?という期待を持たせる。

ベーシストのストラウドが曲名を告げる。

「ブラック・マジック・ウーマン」

おお、ついに待望の名曲登場! ヴォーカルはナイジェル。

で、いつピーターの泣きのプレイが炸裂するのかと待っていたら、ブレイクの後、ソロを弾き出したのは、なんとナイジェルのほう。

以降も延々とソロは続くが、ピーターはあくまでもサブの位置にとどまったまま。

これはなんとも残念。

それでも、ナイジェルの歌とギターがなかなか素晴らしかったので、観客のレスポンスは悪くなかったが、かつて「神」ともよばれたギタリストの、あまりの現状に落胆。

続いてマック時代のレパートリー「ニード・ユア・ラヴ・ソー・バッド」を。リトル・ウィリー・ジョンのカバーだ。

これもタイトな音で出来はそう悪くないが、ピーターのギターには見せ場がなく終わる。

そして最後の一曲。聴き覚えのある、へヴィーなイントロ。

そう、「ザ・グリーン・マナリシ」だ。初期の「グレイテスト・ヒッツ」のトップにも入っていた、ピーターの名刺がわりのようなナンバー。

ハードな演奏は実にカッコよかったのだが、やはりピーターは大半のソロをナイジェルに譲り、バックに徹してしまっていた。

昔のあのエモーショナルなギターソロは、そっくりそのまま、ナイジェルが代演していたといってよい。

以上9曲、ピーターは全盛期のような見事なソロをほとんど聴かせることなく、終わってしまった。

ああ、まだ心身ともにコンディションは元には戻っていないのかな〜という思いを強くしたステージであった。

でも、だからといって、往年のプレイの素晴らしさが損なわれることはない。

やはり、ブルブレやマックでの名演は、永遠に不滅、そう思った。

嵐を呼ぶブルカニ(Part 5)

5番目のトリはもちろん、バディ・ガイ。ブルカニでは一昨年に続く参加だ。

ここまでは、既にレポートしたように、観客席はいまひとつ盛り上がりに欠けていたが、バディの登場で一気にヒートアップする。

後ろの席の観客も立ちあがり、前に押し寄せてきて、係員との小ぜりあいも激しくなってくる。

後藤ゆうぞうさんの派手なアオリに乗っかって、おなじみオーヴァーオール姿のバディが、水玉ストラトを抱えて出現。

もう大変な拍手喝采。さっそく、アップテンポのブルース・ナンバーをブチカマす。

とにかく、ギターの最初の一音から、強烈!

ギュイイイイイイイイイイイイイイ〜〜〜ン!!!!

てな感じで、もう耳に痛いほどの音圧。

さすが、ヒロさんが「メタルのごとし(笑)?」と表現されただけのことはある、ロック以上にロックな大音響だ。

そしてボーカル。これまた、前の4組と比較にならないくらい、耳を直撃するド迫力。

単に声量があるというだけでなく、ものスゴくマイク乗りがいいのだ。テンション高〜い。

さすが真打ちやのう!

野音のステージをところせましと歩きまわるバディに、これまでの欲求不満はどこへやらという感じで、客席も大興奮。

バディのステージングの特徴は、曲にほとんど切れ目がないこと。一曲が終わったのかどうかよくわからないうちに、次の曲が始まっていることもしばしば。

つまり、従来、ほとんどのミュージシャンが守ってきた、「一曲、一曲はきちんとエンディングを持たねばならない」という固定観念から、彼はフリーのようなのである。

バディ・ガイというパフォーマーは、「独立した曲を聞かせる」ことよりも、さまざまな曲をコラージュして切れ目なく演奏することにより、バディ・ガイという「存在自体」を「観せて(SHOW)」いくことに重点を置いているように感じられた。

だから気が向くと平気で曲をストップして、次の曲にそのまま行ってしまう。

曲(カバーものが多い)自体の独立性・完成度より、いまの自分が何を歌いたいか、弾きたいかを優先させているのだ。

こういうサンプリング的なやりかたは、保守的なブルース・ファンには抵抗があるだろうが、若い世代の観客にはさほど違和感なく受け入れられているようだった。

根がミーハーロックファンであるワタシも、全然ノープロブレムでありました(笑)。

 

さて、今回のコンサートのもうひとつの主役は「嵐」(笑)。

最初に後藤さんがアナウンスしたときは「今回はじめて土・日ともに晴れました」とのことだったが、残念ながら1組目の終わり頃にはパラパラと降り出し、2・3組目のころには雨具が必要な降りとなったが、その後いったん上がり、二重の虹が天空に美しいアーチを描いた。

ここでひと安心したのが、マズかった(笑)。

バディの演奏が始まったあたりから、次第に空は再び曇り出し、ほどなく雨が降り出した。

まあこれで最後のステージだから、少しくらい降られてもいいかとタカをくくっていたのが、見事に大降り、いやどしゃ降りになった。

稲妻が光り、雷鳴がとどろく。

ドンガラガッシャーン!!

近くに「落ちた」らしい。しかし、そこでバディ、少しも慌てず騒がず、歌い続ける。

ギターが雨でびしゃびしゃになる。これも気にせず、タオルで拭いて弾き続ける。

さすがのプロ根性である。

バディは、とにかく、若いファンにウケるためには、なんでもやる。

ピックの代わりに、ギターコードをムチのように使った「SM弾き(!?)」(スゴい音が出る)とか、背中弾き、歯弾き、なんでもござれ。

途中からはストラトをアコギに代えて、こちらもなかなかカッコいいプレイを聴かせてくれた。

 

バカうけだったのは、ブルカニでは毎度おなじみ、カメリア・マキちゃんこと静沢真紀さんをステージに呼んで、ふたりでギター・デュエットをしたのだが、そのうちバディの「エロオヤジ」モードが全開となり、そばに引き寄せ、耳元で彼女を口説くようにネットリ歌い始める。

いやー、笑った笑った。

こういうショーアップを、おん年66才になってもまったく照れることなく出来るバディは、やっぱりスゴい。

ブルースマンのワクを見事に逸脱した「エンタテイナー」であるなと感服した。

さて、バディの今回のステージで一番印象に残ったのは、以前のアルバムのタイトルともなっている「フィールズ・ライク・レイン」だった。

ときはまさに土砂降りの真っ最中。なんともシャレがキツイぜ!というシチュエーションだったが、彼は満面の笑みをたたえながら、この曲をしっとりと歌う。観客からも合唱が起こる。

ブルースにおける、ブチ切れそうなテンションの高さとは好対照なのだが、どこかホッとするようなこの曲が観客にも一番ウケていたように思った。

 

あまりの熱演に、予定時間を大幅に越え、それでも最後にきちんとアンコールに応えるバディ。

ピックを観客席に投げ入れ、ステージを縦横無尽に動きまくり、存在をフルにアピール。

クリーム時代のクラプトンを意識して、曲をメドレーにおり込むなど、かなりロック、ロックしていたのが印象に残った。

そして、ついに終演。もちろん、観客はまだまだ興奮のるつぼの中に合ったが、時計ははや8時近く。

さすがに時間切れである。

土砂降りの雨にたたられ、ズブ濡れ、もうボロボロのワタシであったが、同時に昂揚感と満足感もまた味わっていた。

後藤ゆうぞうさんがこう締めくくった。

「これまで25回くらい彼のステージを観てきましたが、今日のが一番テンションが高かったです!」

これはまた、なんという幸運か。

 

大荒れの天候だろうがものともせず、いやそれゆえにいっそう燃えて、絶好調のステージを聴かせてくれた、まさに「嵐を呼ぶ男(GUY)」、バディ・ガイ。

彼の息子のような年齢の中年男(つまりワタシ)も、孫のような年齢の若者たちも、一緒に熱くなった一夜でありました。

 

●パークタワー・ブルース・フェスティバル(01/12/16・新宿・パークタワーホール)

(1)ウエストロード・ブルース・バンド

さすが結成30年だけあって、実に息の合った演奏でした。

7年のブランクを感じさせない、きめの細かい演奏に感心しました。

塩次さん(テレ&ストラト)も、山岸さん(335&ストラト)も、ギターの音色がクリアですごく通りがよかったです。

さすがに、今回は、リハーサルをやったそうですが。

途中から、パパ・グロウズ・ファンクのジョン(kb)も参加。

本場のバンドにも決してひけをとらないグルーヴを感じました。

それにしても、塩次さんはお年をとるにつれ、寺内タケシさんによく似てきた(特に表情や体の動き)と感じたのはワタシだけでしょうか?

(2)ファイブ・ブラインド・ボーイズ・ミシシッピー

いやあ、スゴかったです。

演奏はふつうの3ピースのローカル・バンドって感じでしたが、とにかく歌が!

実際に目が不自由なのはお三かたでしたが、彼らを含めた五人のヴォーカル、そしてギタリスト、ベーシストも歌う歌う!

のってくると、客席まで降りてきて歌いまくるし、マイクなしでも通るくらい声量がある。

ま、カラダもデカいひとが多いのですが。

1943年以来活動しているという(たぶん)70代のおじいさんも、迫力のバスを聴かせてくれました。

コーラス、ソロともに、圧倒的なパワーを見せつけてくれたFBB。

ゴスペル・コーラス、やっぱ本場モンは違いますね!

(3)シーファス&ウィギンス

ギターとハープのデュオ。伝統的なデルタ・ブルースを演奏するユニットでした。

おもにギター(シーファス?)が歌い、たまにハープの方も歌います。

ギターも悪くはないですが、とくにハープの音がよかったです。

包容力のある音といいましょうか、実に気持ちよく聴けました。

ただ、ワタシ自身は風邪のため、だんだん立見がつらくなってきて、後半でギブ・アップ。

ロビーで座って聴いていました。

こういうサウンドの場合、ヴァリエーションをつけるのが難しいので、1時間近くを持たせるのは大変で、けっこうロビーで休憩しているお客さんが多かったんですが…。

CDできちんと聴き直してみたいアーティストですね。

(4)ジョン・プライマー

その3で書いたように、途中で、風邪でへたばってしまいました。

最初にちょっとだけ、彼のギターを持った姿を観たのですが、それからはずっと、ロビーに座って聴いておりました。

音はきちんと聴こえてきました。

バックはけっこう、いま風なラウドな音でしたが、ジョンのギター&ヴォーカルは正調シカゴ・ブルースという感じでした。

ギターがおもにクローズアップされがちなジョンですが、歌もなかなかのもの。

スタイルは古典的でも、歌いぶりにどこかモダンな切れ味を感じました。

いま一番旬のアーティストとよばれるのも、ナットクでした。

(5)ジョージ・ポーター・ジュニア feat.アール・キング

いよいよ大トリです。

前半はジョージ、ジュン山岸、PGFのジョンを中心としたグループで演奏。

音のほうはもう、折り紙つき、バリバリのファンク。

カーティス・メイフィールドの曲などもやっておりました。

ジョージのベース・ソロから始まるブルース・インストもあり、ブルース・フェスティバルらしい演出でした。

後半、おまちかねのアール・キング、登場。

さっそく、ギターを弾き始めたのですが、周りの演奏とキーが合っておらず、周りが気を配ってキーを彼に合わせる一幕も。

かなり手元のあやしいギター・プレイに、観客はハラハラしどおし。

でも、歌になると、けっこうしっかりした歌いぶりでした。

「ゾーズ・ロンリー・ロンリー・ナイツ」「トリック・バッグ」といった、おなじみのナンバーももちろん聴かせてくれました。

かなり、お年を感じさせるステージではありましたが、その芸人魂には、感動すら覚えました。

そして、観客やバック・ミュージシャンの、彼への深いリスペクトも感じました。

「生涯一ブルースマン」とは、まさに彼のようなひとを言うのでしょう。

最後は、オールキャスト出演で「BABY, WHAT YOU WANT ME TO DO」を延々と大合唱。

大興奮のうちにフェスティバルは終了しました。

とにかく、さまざまなスタイルのブルースを堪能出来た午後でした。

来年は誰が来るのか、今から楽しみです。

 

●tRICK bAG(01/8/23・高円寺・JIROKICHI)

ここのところ、メンバーのスケジュールがなかなか合わず、マイナス1でやることの多いtRICK bAGだったが、ひさしぶりにフル・メンバーで出演するというので、JIROKICHIにかけつけた。

8時より少し前、ホトケ氏以外の4人のメンバーがステージに上がる。

さっそくインスト・ナンバーが始まる。それもなぜかフォー・ビート・ジャズ。

ジャム・セッションでよく演るタイプの、ヘッド・アレンジだけざっと決めておいて、後はどんどん回していく、そういう感じの曲だ。

彼らのテーマとも言える「tRICK bAG」から始めるのならともかく、あれれ??…という感じだ。

今日のステージ・セッティングは、左からコジのピアノ&キーボード、ツルのドラムス、クマのベース、そしてモリのギター。コジとモリがいつもとは左右逆だ。これもちょっと??である。

コジがエレピをひとしきり弾いてソロをモリに渡す。モリが弾くのは黒ボディ、茶ピックガードのストラト。

ジャズっぽくオクターヴ奏法なぞを披露してから、次第にサウンドを変化させていくモリ。

ブルースの硬質なフレーズ、そしてフリー・フォームなロック・ギターへと突入していく。

続いてはクマのベース・ソロ、さらにはツルのドラム・ソロ。

曲も終盤かと思われた頃、ようやくリーダー、ホトケ氏登場。

そのまま彼がヴォーカルをとって、「tRICK bAG」へなだれ込んだ。

ツルはいつもより激しくスネアを叩いている(ように聴こえる)。妙に気合いの入ったドラミングだ。

長かった最初のメドレーが終わると、間髪を入れず、次の曲へ。

ツルがおどろおどろしくドロドロとロール。ホトケ氏はマラカスを持ち出して来て、しきりに振る。

これにモリのワウ・ギターがからみ、始まったのがネヴィル・ブラザーズそしてミーターズのナンバー、「FIRE ON THE BAYOU」。

粘っこいビート、泣きのギター、いかにも南部風のアーシーな曲だ。

クマ、ツル、コジも、リフレインではコーラスで参加。

ソロがコジに渡される。一瞬の静けさの中、彼の張りつめたようなピアノ・ソロが流れる。

ホトケ氏は後半、タンバリンに持ち替え、熱っぽい雰囲気をいやましに盛り上げていく。

さて、曲が終わって、ホトケ氏のMC。ここでようやく、今日のイレギュラーな進行の「タネあかし」がされる。

なんと、ホトケ氏は近所のコンビニに行ったまま、開演時刻になっても帰ってこなかったのである。

それを聞くや、客席からはクスクスと笑い声が上がる。

しかたなく後の4人で、セッション風の曲で時間稼ぎをした、というわけだ。

それはそこ、ステージ慣れしている彼らのこと、いかようにでも時間調整してしまえるのである。

そのへんを、変に悪びれずにさらりとネタにして笑いをとってしまうところが、またホトケ氏らしい。

場がなごんだところで、次のナンバー。おなじみの「だれも知らない」である。

デレク・アンド・ドミノスで知られるこの曲、実は相当古くて、70年以上昔のブルース。

コジはそれをふまえてか、懐かしのスイング・スタイルでピアノを弾く。

モリはここで、ギターをギルドのSGに持ち替える。

クリーン・トーン、そう先日亡くなったチェット・アトキンスを思わせるスタイルで弾くモリ。

彼の相変わらずの引き出しの多さに、改めて感心してしまう。

曲が終わると、歌詞の説明をして、またまた客席を笑かすホトケ氏。

続いて始まったのは「ワン・ウェイ・アウト」。

サニーボーイIIの、間男を題材にしたブルースだ。

モリはスライドを弾き、ホトケ氏はマラカスを操る。

中盤、コジのエレピ・ソロ、そしてモリのスライド・ギター・ソロ。 これが最初はおだやかに、そしてコーラスを重ねるにつれ、エキサイトして行く。

デュアンもかくやという、熱の入ったプレイに客席もノッて来る。

終盤は、思い切り引っ張った、エンディング。

実に中身の濃い、御本家オールマンズも顔負けのロング・プレイであった。

ここで、ひと息。ホトケ氏は客席に座っていた、ひとりの少年を呼ぶ。

「きょうのゲスト、フジクラ君です」

そして彼がまだ16歳ということを告げる。16歳……、ン!?

そういえば、ちょっと前に「tRICK bAG tRIBE」の最新号が配信されてきたが、そこに「天才少年ギタリスト出現!」みたいなことが書いてあったのを思い出す。

そうか、その少年のことなんだ、と納得。

彼は顔立ちも体つきも、どこかまだ幼さを残した、「少年」そのものという感じに見えた。

彼はモリの右となりの、若干空きのあった場所に立つ。そうか、そのために、今日はギターのポジションを変えたのかと、疑問氷解。

さっそく黒のストラトを持って「キーはA」という打合せの後、tRICK bAGとの共演が始まった。

曲はおなじみのブルース・メドレー。

ホトケ氏の歌に続いてほどなく、彼にギター・ソロのおはちが回ってくる。

アゼン、とはこのことだろう。ギターの音の立ち上がり、そしてスピード感が、同年輩の少年達とはまるで違う。

フレーズも誰かの代表曲をもろにコピーしたようなものではなく、多くの曲をっじっくり聴き込んで、自分なりに消化、再構成したものであった。これはスゴい!

そのフレーズの中には、BBはいうに及ばず、バディ・ガイやマジック・サム、さらにはスティーヴィー・レイ・ヴォーンといった、さまざまなギタリストの影響が読み取れた。

しかもだ。彼が共演しているのは、きのう今日、バンドを始めた同世代の少年達ではない。

平均年齢45歳を超えようかという(笑)、自分の父親より下手すれば年上、超ベテラン揃いのtRICK bAGの中に入って、まったく臆することなく、堂々とプレイをしている。

なんたるステージ度胸!

自分が16歳のころといえば、もちろん、こんなレベルではなかった。クラプトンの(不完全な)コピーをして、イキがっている、そういう程度であった。

メドレーが終わったとき、彼はもはやただの16歳の少年ではなかった。

そう、場内のだれもが、彼の並はずれた才能を確信したのである。

しばらく、彼に対する賞賛の拍手は鳴りやまなかった。

するとホトケさんは、また合図をして、もうひとりゲストを呼んだのである。

立ち上がったのは、まだ小学生とおぼしき、小柄できゃしゃな体つきの少女だった。ストレートのロング・ヘアーにミニスカートのドレスと、女のコっぽいいでたちだ。

えっ!? もしかして彼女があの……。

「ドラムスの大久保初夏さんです」

予想通りの紹介がホトケ氏からあった。

ブルース関係のHPではかなり名の知られた、小学四年生、弱冠10歳のブルース・ドラマー、大久保初夏ちゃんだったのである。

この「連続パンチ」には、さすがにビックリ。

でもよく考えてみたら、今日はまだ夏休みの最中。

だから彼らも、親御さんの付添いのもと、大人たちの場所、ライヴハウスに来れたのだろうなと納得。

ホトケ氏は、「自分が小学四年だったころは、まだビートルズも知らず、ただただ野球に熱中する少年でした」と告白。

もちろん、ブルースのブの字も知らない、無邪気な子供だったというわけだ。

さて、初夏ちゃんはそれまで鶴谷氏が陣取っていたドラム・セットの前に座る。ちなみに、彼女はツル氏にドラムを習ったこともある。いわば、まな弟子というわけだ。

大人用のドラム・セットに座ると、小柄な彼女がいっそう小柄に見える。こんなきゃしゃな女の子にドラムが叩けるのだろうか…。

そんな不安は、オーティス・ラッシュで知られるスロー・ブルース、「ソー・メニー・ローズ、ソー・メニー・トレインズ」が始まると、一瞬にして消し飛んでしまった。

プレイに、まったく危なげがないのである。

パワーはさすがに女のコかなという感じはあるものの、とにかく、確実にビートをたたき出しているだけでもスゴい。10歳ですよ、10歳。

さらにいえば、tRICK bAGの連中は、彼女のビートに乗って気持ちよくプレイしているといってもよい。

言ってみれば、老練な猛獣tRICK bAGを仕切っている猛獣使いのごとし。

このさらなる「アンファン・テリブル」の登場に場内は、これがtRICK bAGのライヴだということを完全に忘れてしまった(笑)。

初夏ちゃんだけでなく、フジクラ君も負けじと入魂のソロ。モリがその後をフォロー。もう、完全に世代を越えて「互角」の勝負である。

曲が終わると、場内はもちろん、惜しみない拍手の渦。

このメンツでさらにもう一曲、おなじみの「ジャスト・ア・リトル・ビット」。

ロスコ・ゴードン、マジック・サムほか、さまざまなアーティストで知られるこのナンバー、初夏ちゃんはさらにしっかりとしたビートで一隊を引っ張り、エンディングのキメも、パーフェクト。

いや、スゴいわ。

ふたりとも、もちろん、ブルースがいつも聴けるような恵まれた家庭環境で育っているのだろうが、かといって、乳飲み子の頃からブルースを聴かせりゃ、誰でもBBやオーティスになれるってものでもない。

やはり、これはまぎれもない「天賦の才能」だ。

ここでファースト・セットが終了。

筆者は残念ながら都合により、ここで店を後にしなければならなかった。

だが、今日は実に素晴らしい「才能」を観ることができたという充実感で、一杯であった。

tRICK bAGはもちろん、スゴい才能の集合体だが、彼らにひけをとらないスーパーな才能が確実に育っている。

日本の音楽界にとって、実に心強いことではないか。

「RISING GENERATION」という言葉は、まさにフジクラ君、初夏ちゃんらのためにあるような表現だと思っている。

 

●tRICK bAG(01/4/27・高円寺・JIROKICHI)

昨年の10月に初めて観て以来、11月、1月、2月と観てきているから、これで5度目のtRICK bAGライブである。

私はtbのライブには、そのファンをひとりでも増やしていくために、できるだけ知り合いのひとを誘って行くようにしているのだが、今回一緒に行ってくれるというのは、会社で同期のM君だ。

彼は入社以来、女性ファッション誌畑一筋という編集者で、現在副編集長。「不定期日記」の11月29日の項に登場した、あのM君である。

好みの音楽はモダンジャズだとか。そんな彼は、私と同学出身でもある。

当日、午後6時半に待ち合わせの約束をしていたら、「どうも、すぐに出られそうにないんだ。今日片付けなきゃいけないホームページの校了が、急に入っちゃって」とか言い出した。

雑誌の校了だけじゃなくて、ネット関係まで原稿チェックしなきゃならないとは。IT革命とやらのおかげで仕事が増える一方だねえ。私はM君に同情した。

とりあえず、それが終わるまで編集部で待つことにした。

無事終わったのが7時50分くらい。ありがたいことに、車代は彼が持つと言ってくれたんで、タクシーに飛び乗って高円寺に向かうことにした。

道すがら、彼に今日出演するバンドの音楽性、メンバーの年齢・キャリアなどをざっと説明しておく。

彼はこう言う。

「いやあ、楽しみだなあ。おととしの大晦日だったか、娘にラルクのコンサートに連れてけって言われて行ったとき以来かなあ、ライヴなんて。

おまけに、ライヴハウスなんてここ十年以上も行ってないぞ。」

「それに、最近、うちの編集部の女のコたち(注・20〜30代の女性編集者のこと)に、高円寺あたりの中央線沿線に住むのが流行ってるようなんだ。

時代を超越した独特のカルチャーがあるって話だぜ」

私が想像した以上に、彼は今日の行き先に興味津々のようであった。

ステージは8時スタートだから、我々が「JIROKICHI」に到着した8時半ころには、ファースト・セットはすでに半分くらいまで進んでいた。

演奏していたのは「Everyday, I Have The Blues」。

曲が終わると、ホトケ氏は「よう考えたらこの曲は『およげ!たいやきくん』みたいな歌詞ですなあ。毎日毎日イヤなことばかりなんて」などというMCで客席を笑わせている。

彼の軽妙な、関西弁のしゃべくりは、音楽とはまた別の、tbライヴの魅力ではある。

続いて、テレキャスターを抱えたモリ氏が聴き覚えのあるリフを弾きはじめた。そう、「It All Comes Back」だ。

このベター・デイズ・ナンバー、ホトケ氏はけっこうお気に入りのようだ。

「あんたが言うこと、やることに気をつけたがいいぜ。すべてあんた自身に返ってくるから」というその歌詞が、彼自身にとってのいましめになっているのかも知れない。

お次の曲は、これまたおなじみ、ベター・デイズつながりの「Please Send Me Someone To Love」。

こういう、純な男ごころを歌った歌詞が、ホトケさんは大層お好きのようである。私もフェイバリットな曲だ。

さて、次で曲調は一転、激しい16ビートになる。もちろん、「Big Leg Woman」である。

とにかくこの曲になると、コジ氏はがぜん、ノリノリ状態になる。とうぜん、満面の笑顔で。客席ももちろん、ビートに合わせて動く動く。

前半ラストは、レス・マッケーンの「Comared To What」。これまた強力なビートで、オーディエンスをアオるアオる。9時頃、ファースト・セット終了。

さて、休憩時間。私はM君に、これまでの感想を聞いてみた。

開口一番、彼はこう言った。

「いやー、笑っちゃうよな」

一瞬、目がテンになった私を尻目にM君はこう続けた。

「つまりさ、50になっても長髪にして、こうしてずっとバンド活動しているのがさ」

別にバカにしているわけではなく、「おれたちより年上もいるのによくやるぜ」って言いたいようだ。

演奏曲もそうだが、ヴィジュアルがまたそれ以上に強烈にレトロ、そーいうことであった。

たしかに、客観的に見て、tRICK bAGの連中の格好は相当キているわ。

10代、下手すると20代の子供くらいいてもおかしくないオヤジが、長髪によっちゃれジーンズ姿だぜ。

「いきなり、30年前にタイム・スリップしちまったって感じだぜ。オレもひとより少し遅れてだけど、まずビートルズのファンになって、それから吉田拓郎にハマってたのを思い出したよ」とM君。

それから、ふたりの会話はtRICK bAGをいささか離れて、最近テレビ番組でよく見かける、吉田拓郎の話に花が咲く羽目になった(詳細省略)。

M君は言う。「親が『これは聴いていい』とか『聴いてはダメ』とかいうのがあったよな。カーペンターズやサイモンとガーファンクルならいいとか、ハードロックはダメとか」

「そーそー、オレなんか、母親に『エレキを弾くやつは全部不良』とかいわれたから、『おーし、その不良になったろうじゃん』とか思って、親に内緒でエレキ買っちまったもんな」と私。

そんな「聴いていいポップス、悪いポップス」談義も、後半のステージ開始とともに中断となる。

まずはホトケ氏のフェイバリット、ジェームス・ブラウンの「Out Of Sight」でファンキーにスタート。

続いて、tbのステージではおなじみ、「I Go Crazy」(ジェイムズ・ブラウン作)でグイグイとドライブ。

三曲目は、ホトケ氏がもっとも愛好する女性ブルーズシンガーのひとりだというエスター・フィリップスの、ラスト・アルバム「A Way To Say Goodbye」よりタイトル・チューンを。

ホトケ氏のディープな歌いぶりに、我々もしばし、シミジミとしたのであった。

続いて、B・B・キングの名盤「ジャングル」に入っているナンバーを。タイトル失念。

おなじみのファンク・ナンバー、「Whatcha Gonna Do」がこれに続く。

さらに、濃厚なソウル・バラードが続くのだが、これもタイトルを聞きのがす。申し訳ない。

ファースト・セットを上回る熱演ぶりに、客席もいよいよヒート。

とどめを刺すかのように始まったのは、フレディ・キングの「Pack It Up」。当然、場内のグルーヴは最高潮に。

興奮のうちに、セカンド・セットが終わった。

しばらくなりやまない拍手に呼び戻された5人。アンコール・ナンバーは、「Ain't Nobody's Business(If I Do)」。

70年以上も演奏され続けてきたオールド・タイミーなナンバー。でも彼らが弾き歌えば、また新たな魅力が感じられる。これがtbマジック。

それから、もう一曲。最後はこれっきゃないでしょうと言わんばかりに始まったのが、「Shake, Rattle & Rol」などおなじみの曲が出てくるシャッフル・メドレーだ。

もちろん、観客たちは大ハリキリで乗りまくる。そして全ステージが終了。

11時15分ころ、私たちは高円寺を後にし、最後の目的地、新宿歌舞伎町へと向かった。

もちろん、とことん飲みあかすためである。

が、先ほどまでのtbのパフォーマンスが我々におよぼした「タイムマシン効果」はことのほか強力であった。

その夜、というか明け方近くになるまで、M君と私が、酒場の女のコたちまで巻き込んで、「ロック&ポップス原初体験」のハナシに明け暮れたのは、いうまでもない。

 

●コンパイ・セグンド (00/12/5・渋谷公会堂)

日本でも大ヒットとなったヴィム・ヴェンダース監督の音楽ドキュメンタリー映画、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」。

それに出演した、キューバのベテラン・ミュージシャンたちの中でも最高齢のギタリスト兼歌手、コンパイ・セグンドがついに来日した。

その夜の渋谷公会堂ほど、老若男女、文化人ふうの熟年からミーハーOLまでバラエティーゆたかな観客層を飲み込んだコンサート会場はかつてなかったに違いない。

ちょっとリッチそうな30才前後のカップルを中心に(S席で7500円、たしかにお高めの料金設定である)、さまざまな世代、ファッションの観客が集まった。

定刻7時を少し過ぎて、コンサートは始まった。おん年93才という高齢のため、果たして日本まで無事来れるのか、という危惧は誰しもあったであろう。

が、現実にソフト帽を小粋にかぶったコンパイが、バックメンバーが登場した後、ゆっくりとすり足で踊るようにステージ中央に歩みよるのを観たとき、そんな不安はいっぺんに吹き飛んだ。

観客席から、何ともいえないどよめきが湧き起こった。

早速、メンバーから「アルモニコ」という彼自身が発明したという小ぶりの7弦ギター(遠目には8弦に見えるが、普通の6弦ギターにG弦のみダブルになっているそうだ)を手渡されると、「1980年の曲からはじめます」と言って、演奏が始まった

バックの編成はいたってオーソドックスかつアコースティック。テナー歌手1名、ウッドベース、パーカッション2名、6弦ギター、そして途中からクラリネット2名とバリトン・サックスが加わった。

いまふうのサウンドを奏でる電気楽器、電子楽器はひとつもない。

それでも、最新のポップ・ミュージックにまったくひけを取らない、みずみずしいサウンドだ。

歌のうまさ、アンサンブルのよさ、達者なソロ・プレイ、そしてクラリネット吹きたちの陽気なダンスに、すぐに会場はこのノスタルジックな音楽の虜となった。

正直なところ、私も(たぶんその会場にいた観客の大半もそうであったろうが)、彼の音楽は「ブエナ・ビスタ〜」のサウンドトラックを聴いたきりで、その足跡を詳しく知る者ではない。

「チャン・チャン」のような代表曲をのぞけば、知らない曲がほとんどであり、おまけにスペイン語にはまるで不案内ときている。これ以上、聴く資格不足の観客はないといえるだろう。

しかし、彼とそのバック・バンドの奏でる音楽は、それでも十二分に私を楽しませてくれた。MCは同時通訳がついており、大体のニュアンスはスペイン語音痴の私にもわかるしくみだ。

レパートリーは恋の歌が中心だ。あのお年でも(失礼)、艶っぽさを失うことなく、「この歌はわたしの最初の恋人に捧げます」などと粋な前振りで歌いはじめる。ギターのプレイにもよどみがない。

歌はおもにテナー歌手がリードをとり、コンパイはその名(セグンドとは英語のセカンド、二声のハーモニーのうちの下のパートを意味する)のとおり、バリトンでリードに絡んでいく。

たまに自分もリードをとると、これがまたシブい味わいがある。

そして、特筆すべきことだが、コンパイは他のメンバーと同様、ずっと立ちづめでの演奏であった。

誰もが、途中で休憩したり、椅子に座ったりするだろうと予想していたが、彼はまったく座ることなく、1時間半のステージをしっかりとつとめたのである。これには、驚きを禁じ得なかった。

次々と繰り出す、陽気でしかもどこか悲哀をも含んだメロディーとリズムに、観客席は次第に熱気をはらんでいくのが、よく判った。

ラストは勿論、場内総立ちの「チャン・チャン」。演奏者側があおることなどまったくなしに、自然と皆の腰が上がった。

アンコールは一曲。さらりと演奏し終えて、老ミュージシャンは舞台のそでへ消えていった。

観客たちはみな、まるで今世紀最後の「奇跡」を見たかのように、興奮を隠し切れず、声高に語らいつつ帰路についた。

コンパイ、あなたを今ここで観ることができたことは、おそらく神の恵みなのでしょうと。

 

●tRICK bAG(00/11/15・高円寺・JIROKICHI)

二度目のtRICK bAGライブである。前回同様、8時スタート。打合せをしているふうなリラックス状態から、そのまま音出しをして始まったのが、このバンドのテーマともいうべき、アール・キングの「トリック・バッグ」。ジャズィーなアレンジを交えつつ、心地よいグルーヴで聴衆を包み込む。

ウォーミング・アップが済んだところで、一気入魂、ぶちかましたのが、「悪い星の下に生まれて」。アルバート・キングの熱演で知られる、ブッカー・T・ジョーンズとウィリアム・ベルの佳曲だ。モリのファイヤーバードVもへヴィーなリフを繰り出し、ソロでは泣きまくる。

3曲めはドリフターズ(もちろん本家本元、米国のR&Bグループ)のカヴァーで「ドリフティン・ブルース」。この曲からはモリはテレキャスター・タイプのオリジナル・ギターに持ち替える。このメイプル・ネックのギターが実にクリアーな音色で、幅の広いサウンドを生み出してくれる。

続いてB・B・キングの「ビューティシャン・ブルース」。ビューティシャンとは美容師のことで、いわばアメリカ版「髪結いの亭主」の歌ですとホトケのMC。

お次は、アルバム「LAST EXIT」にも所収の「ビッグ・レッグ・ウーマン」。ファンキーなビートにからむ、コジ氏のシンセ・アレンジが冴える。その他、「セイム・オールド・ブルース」などディープなソウル・バラードと、ビート・ナンバーを交えて約1時間、あっというまに1stセットが終わってしまった。

その間、やはり目立っていたのが、モリ氏のこれぞヴォーカル・バッキングのお手本!と褒めたくなるような堅実なプレイと、終始笑顔を絶やさないにもかかわらず、猛烈なスピードで鍵盤上をかけめぐったコジ氏のプレイだった。このふたりのスーパー・テクニシャンを両翼に従えると、ホトケ氏のヴォーカルの渋さが、いよいよ際立ってくるのである。

約30分余りの休憩をはさんで、2ndセットが始まる。

まずはホワイト・ブルースの雄、バターフィールド・ブルース・バンドのナンバー「イフ・ユー・リヴ」から。モリはフェンダー・テリー(メイプル・ネック)に持ち替え、泣きのスライド・ギターを聴かせる。そしてシャッフル・メドレー。こういう、レパートリーの引き出しの多さでは、tbは並ぶものがない。

またオリジナル・ギターに戻しての曲は、ベン・E・キングの「ヤング・ボーイ・ブルース」という、大向こうをうならせるような選曲。モリの余裕綽々のソロのカッコよかったこと!

この晩の聞きものといえば、次に森園がソロで歌った「アフター・ミッドナイト」だろう。「コケイン」の作曲で知られるJ・J・ケールの作品。というより、同じクラプトンのカバー・ヒットのほうが有名かも。どちらかといえばケールに近いスタイルで、静かに燃え上るような歌、そしてギター・ソロを聴かせてくれた。シブいぜ、モリ!

お次はミッドナイトつながりで(?)「ミッドナイト・スペシャル」。CCRのカバー(「ロカビリー・リバイバル」あたりに入ってたんではないかのう)でも知られるこのR&Bの名曲を、歯切れのいいtb味にさらりとアレンジして聴かせてくれた。もう、「うんうん」と聴き手を唸らせっぱなしの絶妙な選曲じゃ。おっさんファンには、こたえられんっす。

かと思えば、「スモール・タウン・トーク」のような、まったりした味の小曲をはさんでくるし、その次にはハードにドライブする、ステイタス・クオー顔負けのブギーで攻めてきたりする。ストレート、カーブ、シュート、フォーク、なんでもござれの万能投手状態なんである。

2ndセットは一時間を超え、1stをさらに上回る、激しいピアノソロ、ギターソロの連続。モリのスライドも天空を飛び回るがごとき、フリー・フォームで泣き喚く。

すでに時間は11時をまわろうとしていたが、ステージからメンバーが消えてもだれも帰ろうとしない。拍手で5人が呼び戻される。

アンコールは2曲。ことにラストの「ストーミー・マンデー」の素晴らしさといったら! モリにB・Bの生き霊が憑依したかのようだ。決めのフレーズひとつひとつに聴衆の溜め息がわきおこる。本当に、総毛立ちそうなプレイだ。ギター弾きなら、このありさまを観て、嫉妬しない奴はいないはずだ。

すべてが終わった。モリはまるでアマチュア・バンド時代みたいに、おどけて「終わり、終わり」と叫んだ。さっきまでの「二の線」の自分に照れたかのように。

でも、やはり、すげえ。その一言しかなかった。

この最強のライブ・バンドとの数時間を共有できたことに、その夜、その場の誰もが酔いしれているのだった。

 

●tRICK bAG(00/10/18・高円寺・JIROKICHI)

推薦盤のページにも登場したtRICK bAGであるが、ホームグラウンドとでもいうべき「JIROKICHI」で定例のライブが行われたんで、初めて生で観た。

いつもより少し遅めの8時に1stセットがスタート。狭い店内(フルで30人くらいか)はほぼ満杯の入りだ。

ステージの向かって左サイドからギターのモリこと森園勝敏、ドラムスの鶴谷智生、ヴォーカル&アコギのホトケこと永井隆、ベースの大西真、キーボードの小島良喜という配置。テクニック、キャリアともに日本を代表する巧者ばかりである。

演奏はホトケの2ndソロアルバム「FOOL'S PARADISE」中のナンバー「I Don't Know」から始まった。モリは真っ赤なエピフォン・ファイヤーバードVをおもに弾く。これがなかなかイカした音色なのだ。ソリッドなのにコシとパワーがある。

途中、エフェクターのトラブルなど(なんと全部アナログのエフェクターである!)若干起きるも、そこは百戦錬磨のつわもの、涼しい顔をして切り抜けるモリ。ホトケも、最初からトバすというより、緩急とりまぜたナンバーで、じわじわと盛り上げていく。シャウトも控えめに、どちらかといえば「引き」のワザで聴かせてくれた。リズム隊のパワーの凄さはいうまでもないが、小島のシンセ・アレンジも実にツボを心得ていて、サウンドに奥行きを添えてくれる。

とにかく、何十年も第一線で活躍してきたプロ中のプロでこその貫禄。乗せれば勝ち!みたいな、お子チャマばかりのロック・コンサートとはワケが違うのだ。聴くがわも、耳が肥えているから容易には煽られない。手だれの者同士の真剣勝負のようである。

その日は残念ながら都合により1stセットしか見られなかったが、彼らには相当数のレパートリーがあると言う。実際、推薦盤に取り上げたライブ・アルバムのための3日連続ライブでは、毎日違った曲でやったという。近いうちにまたライブを観て、彼らの全貌を知りたいものだ。

 

●タジ・マハール(00/10/10・南青山・ブルーノート東京)

二度目の来日ということだが、日本での知名度はイマイチなタジ・マハール。でも、映画「ブルース・ブラザーズ」への出演やら、グラミー賞受賞やらでマニア以外にも次第に名前が通るようになってきた。その日は、グラミー賞のアルバムと同じバック・バンド「ファントム・ブルース・バンド」を従えての演奏だったが、いやあ凄かった。

なにかとりたててギミックを使うわけではない。ごくごくオーソドックスなR&Bバンドのバッキングで歌うだけなのだが、その「声」の存在感というか、説得力がただものではない。G・B・Kb・ Ds・ Ts ・Tpの6人のラウドな音の洪水に、その銅鑼のごときヴォーカルが完全に拮抗しているのだ。

まったく遠慮というものを知らぬバックのメンバーの「侵略」にも決してひるむことなく、その歌声はあくまでもパワフルであり、ときには露骨に腰をふり、還暦間近のジジイとはとても思えぬワイセツなまでのエネルギーをまきちらし続けたのである。うーむ、こんな歌い手、日本におるか? ちょっとばかし、ブルーが入ってしもうた。ユーヤさんやムッシュじゃとても太刀打ちでけへんわ。

もちろん、「押し」だけではなく、「引き」の乗りの曲もあったが(カリビアン調の曲など)、大半はノリノリのオン・ビートな曲で攻めまくって、最後には我々をエクスタシーの坩堝にたたき込み、昇天せしめたのである。

まったく、タイヘンな「老人力」を見せつけられてしまった。もう、あきまへんわ。(笑)

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